<原著>レニン・アンジオテンシン系の亢進はつくば高血圧マウスの心肥大と腎障害を促進する
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概要
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つくば高血圧マウス(THM)はヒトレニンおよびヒトアンジオテンシノーゲンの両遺伝子を導入した高血圧モデル動物である.この実験モデル動物を用いて心肥大および腎障害に対するレニン-アンジオテンシン系(RAS)の作用を明らかにするために本実験を行った.雄性のTHMを無投薬群, Lisinopril投与群, Hydralazine投与群の3群(各16匹)に分け, 12週令から8週間投薬を行った.また正常対照として同週令の雄性のC57BL/6マウスを16匹用いた.各マウスについて収縮期血圧および尿中アルブミン排泄量を週に1回測定した.20週令で屠殺し, 心筋細胞径, 心体重比, 糸球体硬化率を測定し, またfibronectinの免疫染色を行った.無投薬群ではC57BL/6マウスに比べ収縮期血圧は約35mmHg上昇しており, また心筋細胞径, 心体重比, 腎糸球体硬化率および尿中アルブミン排泄量はともにC57BL/6マウスに比べ有意に増加していた.またfibronectinは心臓の間質と腎糸球体に強い発現を認めた.Lisinopril投与群では収縮期血圧は無投薬群に比べて有意に低下し, 心筋細胞径, 心体重比, 腎糸球体硬化率および尿中アルブミン排泄量もともに無投薬群に比べ有意に少なかった.またfibronectinの発現は殆ど認められなかった.Hydralazine投与群でも収縮期血圧は無投薬群と比べ有意に低下したが, 心筋細胞径と心体重比は無投薬群と有意な差は認めなかった.また腎糸球体硬化率と尿中アルブミン排泄量は無投薬群に比べ有意に少なかったものの, 腎糸球体硬化率はLisinopril投与群よりも増加していた.更にfibronectinは無投薬群と同様に心臓の間質と腎糸球体に強い発現を認めた.この事からTHMの心肥大の進展にはRASが重要であり, 腎障害の進展にはRASと昇圧がともに重要である事が示唆された.
- 近畿大学の論文
- 1998-12-25
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