<原著>眼球運動を指標とした認知機能の発達と障害
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
本研究は筆記と眼球運動による図形再現課題の成績を健常成人群(平均年齢40.5歳)と健常児童・青年群(5-6歳, 8-9歳, 12-13歳, 15-16歳, 19-21歳)で比較し, 図形認知能力の発達を明確にした.またDSM-IVの診断基準を満たす, 自閉性障害者にも同様の課題を施行し, その認知能力の問題点について研究した.その結果は以下の通りである.第一に, 再現能力は年令によって変化し, 課題によって, 成人レベルに到達する年令が異なった.筆記では8-9歳, 光点で誘導される四角形追視後の眼球運動による再現では12-13歳, 静止した四角辺追視後の再現では15-16歳であった.すなわち視覚的フィードバック, 感覚-運動的要素の介在する再現課題の方が, より低年齢で成人レベルに到達していたと云える.第二に, 以上の課題による到達年齢の差から, 12歳前後が, 認知機能の質的転換点と考えられた.第三に, 自閉性障害者では, 筆記では成人レベルの再現能力を示したが, 眼球運動による再現では12-13歳以下の能力であった.これは視覚的フィードバックの有無が大きく関連し, 自閉性障害者が上記の12歳の転換点を通過していないことが明確となった.また正常群とは反対に感覚-運動的要素が介在する課題の方が成績が不良で, 外界の律動性に自らの運動を同期させることが困難であった.
- 近畿大学の論文
- 1998-12-25
著者
関連論文
- 精神症状を前景として急性に経過した原因不明脳炎の臨床的研究
- 眼球運動を指標とした認知機能の発達と障害
- 「S- 3. 小学生におけるPTSD症状 : 腸管出血性大腸菌O-157集団発症のアンケート調査を中心として」を司会して
- シンポジウムS- 3. に対する討論
- 指定討論
- 症例検討(4)に対するコメント
- 14.小児における精神科と他科との連携の現状について
- 自閉症状と言語症状の関連について
- 912 慢性分裂病者における眼球運動の特徴(分裂病,臨床2,臨床)