<原著>非胆汁酸有機アニオンの胆汁中への排泄機構についてラットを用いた研究
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概要
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非胆汁酸有機アニオンの胆汁排泄機構について, モデル薬剤としてpravastatinを使用し, その毛細胆管側肝細胞膜空胞(canalicular membrane vesicles, 以下CMV)への摂取におけるadenosine 5′-triphosphate(ATP)とpHの影響についてSprague-Dawley(SD)ラットを用いて観察し, 胆汁酸の一つであるtaurocholate(以下TC)のCMVへの摂取と比較検討した.また, 閉塞性黄疸時におけるCMVへのpravastatin, TCの摂取, 閉塞性黄疸時の膜流動性の変化についても検討した.Eisai hyperbilirubinuria rats(以下EHBR)のCMVについても追加検討した.SDラットのCMV内側のpHを6.7に固定し, 外側のpHを5.2,6.7,8.2のいずれにしても, [^<14>C]pravastatinの初期摂取(20秒)は, ATP存在下でATP非存在下に比して摂取の増加を認めたが, CMV外側のpHを低下させるに従いその摂取は増加し, pH5.2において最も増加した.この条件でのpravastatinの摂取は浸透圧を増加させるに伴い減少し, pravastatin濃度依存性, ATP濃度依存性にCMVへのpravastatin摂取は増大し, 飽和傾向を示した.従って, 膜にpravastatinの輸送坦体が存在することが考えられた.一方, [^3H]TCの初期摂取(20秒)はpravastatinとは異なり, CMV外側のpHを低下させるにもかかわらず, その摂取は促進されなかった.閉塞性黄疸群のCMVへのATP依存性pravastatinおよびTC摂取は, それぞれのsham operation群と比較して有意に低下していた.閉塞性黄疸群におけるCMVの膜流動性は, 無処置群と比較して有意差を認めなかった.EHBRのCMVにおいても[^<14>C]pravastatinのATP依存性摂取を認めたが, SDラットのそれに比してKmの増加とVmaxの低下を認めた.一方, [^3H]TCのATP依存性摂取は, SDラットとEHBRとの間で有意差を認めなかった.以上の結果より, 非胆汁酸有機アニオンであるpravastatinのATP依存性排泄は, pH勾配(細胞内側<外側)による促進作用が存在し, EHBRにおいてその排泄が高度に障害されていることより, 胆汁酸の輸送とは異なることが明らかとなった.更に, 胆汁酸および非胆汁酸有機アニオンの輸送システムは, 閉塞性黄疸時の早期よりほぼ同等に障害されると結論した.
- 1996-12-25
著者
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