電子顕微鏡による木材細胞膜の空隙構造に関する研究 I : 細胞膜内の各膜層別の空隙構造の差異(林学部門)
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概要
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木材細胞膜の空隙構造を明らかにするための一実験として, ヒノキ(Chamaecyparis obtusa Endl.)の心材小試片を硝酸銀30%水溶液および30℃飽和水溶液(約260%)中に浸漬し溶質を十分拡散させたのち, 試片を(1)-85℃で凍結しそのまま減圧乾燥, (2)シリカゲルを入れたデシケーター中で常温で乾燥, (3)105℃の乾燥器内で乾燥, の3方法で乾燥し仮道管細胞膜内に沈着した粒子を電子顕微鏡で観察した。そして細胞膜内の各膜層における粒子の直径および数を測定しさらに粒子体積を計算して, 各膜層別の空隙直径とその分布, 空隙数, 空隙体積についてのデータを得た。得られた結果はつぎのとおりである。1)乾燥方法および濃度の差異により粒径分布の範囲は変化した(最大 : 15∿200Å, 最小 : 15∿100Å)。しかし2次膜ではピーク値は変わらず, つねに直径40∿45Åであった。このことから細胞膜中にはこの径の空隙が最も多数存在していると推察される。(2)各膜層別の平均空隙直径についてはI+P層が2次膜よりも30∿60%大きかった。2次膜内の各膜層間にはほとんど差は認められなかった。(3)各膜層別の空隙数はS_1層が最も多くS_2層の1.3∿1.8倍であった。I+P層, S_3層はバラツキが大きかった。(4)各膜層別空隙体積についてはI+P層が最も大きくS_2層の2∿3倍であった。つづいてS_1層がS_2層の1.2∿2.0倍であった。S_3層は乾燥方法による変化が大きかった。
- 京都府立大学の論文
- 1972-10-15
著者
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