飽水木材中の溶質拡散 III : (2) 木材繊維直角方向の電解質の拡散に及ぼす試片厚さの影響(林学部門)
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概要
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前報に続き, 飽水木材中の溶質拡散に及ぼす試片厚さの影響を0.5mol.のKCl溶液を用い, 50℃の一定条件下で, ヒノキおよびブナ材の繊維直角方向の場合について検討した。得られた結果を要約すると次のとおりである。(1)木材組織に起因しての拡散係数の変動は前報同様にヒノキよりもブナにおいてやや顕著であった(Table 2)。(2)ヒノキでは半径, 切線両方向の拡散係数に著しい差異はなかったが, ブナの場合には半径方向の拡散係数が切線方向のそれよりも若干大きかった(Table 2,Fig. 3)。(3)ヒノキおよびブナの両方向の拡散係数をKClの水中におけるそれと比較すると, 半径方向の場合 : ヒノキ約1/73,ブナ約1/71,切線方向の場合 : ヒノキ約1/82,ブナ約1/115であった(Table 2参照)。(4)ヒノキおよびブナの両方向の拡散係数は, いずれも試片厚さによって影響されないことが認められた(Table 2,Fig. 3)。(5)拡散係数既知の2枚の試験片を重ね合わせた試料についての測定結果によると, その拡散係数はいずれも各試験片のそれにほぼ等しく, 試片厚さの影響が認められなかった(Table 3)。拡散係数に及ぼす試片厚さの影響は拡散の抵抗に対する有効毛管断面と厚さとの相対効果の差異に起因し, KClの場合には水中における拡散係数の約1/20以上になるとその影響のあらわれることが推測された。
- 京都府立大学の論文
- 1971-10-15