スギのさし木における発根後の呼吸速度の季節変化(林学部門)
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
呼吸量を知るうえで基礎的な資料となる呼吸速度(mgCO_2/g dry weight/hour at 25℃)を, スギのさし木苗を用いて, 発根直後から約2年間にわたり, 1ヵ月間隔でもとめた。測定は個体と部分(0年生, 1年生, 2年生の各葉, 主軸, 地下主軸, 根)にわけて行なった。呼吸速度は個体, 各部分のいずれについても, 春と秋に急激に増加し, 春から夏, 秋から冬にかけて緩慢に減少した。しかし, 根だけはこの傾向がやや異っており, 5ヵ月の間隔をおいて規則的に呼吸速度の増減をくりかえし, 冬にも呼吸速度の増加がみられた。春と秋における呼吸速度の増加は, スギ苗の生長の盛んな時期が春と秋にあるという週期的な生理活性の消長が大きく影響をおよぼした結果であると考えられる。また, 秋に比較的高い呼吸速度がみられたのは, 日おいをはずしたことによる一時的な光の強い照射が1つの原因とも考えられる。葉の呼吸速度は葉令が進むとともに減少しており, 葉の生理活性が年々低下することが推察された。さらに葉令が4,5年とふえる場合には, 呼吸速度は季節的な週期性に影響されず, 温度依存による基礎代謝だけか, あるいは落葉するということが考えられる。呼吸作用が本来, 温度に依存することから, 秋から冬への呼吸速度の減少は温度依存的な現象であると思われる。一方, 春から夏へは, この期間で盛んに物質生産が行なわれており, 物質の蓄積が続くが, 呼吸基質は一定量を維持するわずかの増加しかないため, 単位乾重あたりで呼吸速度をもとめた場合, 物質生産が続くかぎり減少傾向となることが考えられる。しかし, 週期の一環としての生長の開始直前では, 何らかの作用により物質の変化, 転流などがあって, 呼吸基質の増加や活性化の起ることが予想される。また, 地下部分の呼吸速度が地上部分のそれよりも遅れて増加したり, 季節変化に若干のちがいがあることから呼吸基質となる物質の苗体内での流れが考えられる。
- 京都府立大学の論文
- 1971-10-15
著者
-
徳岡 正三
京都府立大学農学部造林学研究室
-
徳岡 正三
Laboratory of Silviculture, Faculty of Agriculture, Kyoto Prefectural University
関連論文
- ヒノキのさし穂の吸水と発根(林学部門)
- 中国内蒙古の沙地における緑化・造林樹種としての叉子円柏 (Sabina vulgaris) と樟子松 (Pinus sylvestris var. mongolica) さし穂の吸水傾向(林学部門)
- ヒノキさし穂切口の水浸漬期間が異なるときの木部圧ポテンシャルおよび発根について(林学部門)
- スギのさし木における発根後の呼吸速度の季節変化(林学部門)
- 生長要因の性質についての一考察(林学部門)