生乳の乳脂率の季節変動について
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概要
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近年,乳脂率が非常に低い低脂肪乳と呼ばれる生乳が生産されることがあり,酪農経営上の問題となっている。乳脂率は生乳の生産者価格(以下乳価という)を算定するための極めて重要な要因である。したがって,乳脂率が乳価算定基準を大きく下まわることは酪農経営上非常に大きな損失を負うことになる。乳の乳脂率に関し,日本農林規格では生乳について3.2%以上を特等乳,2.8%以上を一等乳,2.8%以下を二等乳に格付けることを定めており,乳および乳製品の成分規格等に関する厚生省令(以下乳等省令という)では牛乳の乳脂率を3.0%以上と定めている。またわが国では乳価算定法として基準乳脂率3.2%を0.1%増減するごとに乳単価を加算または減算する脂肪スライド制が採用されている。これら各種の規定などから生乳の乳脂率について次のようなことがいえる。日本農林規格にいう二等乳は生乳の流通上乳価が非常に低い格外品を意味するので生乳が一等乳以上の規格の正常乳として扱われるためには少なくとも乳脂率は2.8%以上でなければならず,乳等省令にいう牛乳の原料となる生乳の乳脂率は3.0%以上であることが望まれる。さらに近年,わが国では生乳が生産過剰の傾向にあるため,生乳の流通においてはより高い水準の乳質が要求されると考えられるので,乳脂率については常に乳価算定基準の3.2%以上を保持することか経営上好ましい。ところが,低脂肪乳といわれる生乳は酪農家が乳業会社へ出荷する群乳でさえ2.0%前後と非常に低い乳脂率を示すことがある。Powellは乳牛にみられる低脂肪乳の発生原因として粗飼料給与量の不足を報告しており,現在はそれが最も一般的な原因と考えられている。わが国の酪農は粗飼料生産の土地基盤が整備されないまま乳牛の飼養頭数のみを増加する形で規模拡大が進められたため,粗飼料不足が経営上の大きな問題となっている。この問題は今後も容易に解決されるものではなく,粗飼料不足による低脂肪乳の発生は増加すると思われるので,低脂肪乳発生の機序を究明し,その予防法を追求するための飼養学的な研究が必要と思われる。そこで,この研究を進めるにあたり,低脂肪乳発生の現状を把握する必要があると考え,できる限り広い範囲にわたり,多数の農家から群乳の試料を収集し,それらについて乳脂率を測定した。
- 石川県農業短期大学の論文
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