<研究論文>空間的思考と空間の文法化
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概要
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言語表現は,空間に関わる人間の基本的な経験を基盤としている。空間的事態表現は,静的(static)事態と動的(dynamic)事態との二種類に大きく分ける。静的事態として場所格表現,そして動的事態として奪格(起点)表現と与格(到達点)表現などがある。本稿では,特に場所表現の意味的拡張を考察する。認知文法の基本的な考え方の一つとして,Figure-Groundという知覚分化の概念が言語構造に反映されるというものがある。Talmyが示したように,事物が文の主要な項(Figure)として扱われるのか,それとも周縁的項(Ground)として表されるのかにより構文のタイプが変わってくるのである。構造化の仕組みとして,このFigure-Groundの記号化を用いることにより,様々な概念や経験の領域を形成して行く過程を探ってみる。認知文法によると,イメージ・スキーマは,認知的過程をとらえるための重要なモデルであり,特に,身体の構造に基づく経験を構造化する抽象的なイメージ構造が重要な役割を果たす。空間表現の場合,例えば,「何かが何かの中にある」というイメージ・スキーマが重要になる。ここでは,この容器のスキーマモデルを用い,空間ドメインから様々な社会的・抽象的ドメインまでの場所格の広がりを考察する。また,空間関係づけの記号化の手段として,身体部分や空間を表す語彙の文法化の過程を分析し,場所格表現の多義性の説明を試みる。
- 2000-03-31
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