終身雇用をめぐる法律の諸相
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概要
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時代の流れの中でこれ以上,存続させられえないと言われている終身雇用はなぜかまだ健在のようだ。また,リストラという言葉に馴れたのだあろうか,この一二年,この問題はあまり話題にならなくなった。なぜだろうか。ここで日本の労働法には,終身雇用制を守る要因が存在するのではないかという視点から,論を進める。まず,解雇を定める基本的な法律に焦点を合わせる。日本の法律では雇用者側の「解雇の自由」に,「正当な理由の要求や「解雇権の濫用」という概念を取り入れたため,実際には解雇が困難になっている事実が明らかになる。なお,欧米から,その制定にあたり,強い影響を受けたはずの法律だが,その行間や言葉使いには日本独特の考え方が浮き彫りになっている。「社会通念」への頻繁な訴えはその一例である。そこで,新しい労働システムの導入を最優先にしたいと主張する労働省と,旧労使関係を守る法律との間に一つの矛盾を感じる。後半では,労働者の流動化や事業転換を促進するために取られた主な政策を検討することにした。雇用調整助成金,ビジネス・キャリア制度,産業雇用安定センター,ホワイトカラー流動化支援事業などの制度の趣旨や具体的な運営も簡単に紹介する。さらに,パート労働,派遣労働などの,これから台頭はずの労働型を奨励するために欠けていた法律的な環境の補足を目指した新しい法律を紹介する。これらの論議を通じて,労使関係において,国家の役割が問われている。国家はどこまで関与すべきなのだろうか。戦後の日本経済では「政・官・財」の三界の密着が,労働者よりも企業に有利な環境を作り上げたと言える。昨今,「労働者の自立育成」や「自己の人生設定」をモットーにする労働省は,労働者の味方に変わったのだろうか。それとも,依然として,リストラや解雇を容易にする環境を作り上げ,財界の忠実なパートナーたろうとしているのであろうか。しかし,日本経済の発展を支えた会社本位主義,終身雇用の崩壊には,日本経済を危うく要因がひそんでいるのではないだろうか。主要な法律の仏訳や事例の紹介を通じて,フランス人をはじめ,欧米人の間でよく論じられている日本の労使関係について,より正しい認識を持ったための参考になることを願っている。
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