オクラトキシンAの腎発がん機序解明へのアプローチ
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概要
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カビ毒オクラトキシンA(OTA)は長期投与によりげっ歯類腎臓に腫瘍を誘発する.しかし,変異原性については明確な結果が得られていないことから,その発がん機序は不明のままである.我々は,OTAが腎臓に発現する各種トランスポーターを介した腎内動態を経て,近位直部尿細管(S3)に蓄積することに着目し,2つのレポーター遺伝子,gptならびにred/gam(Sp-)を導入したgpt deltaラットに発がん用量のOTAを投与して,腎皮質及び髄質外帯部におけるin vivo変異原性評価を実施した.その結果,皮質部では変異原性は認められず,発がん標的部位であるS3を含む髄質外帯部において,主に欠失変異と考えられるSpi-変異頻度の上昇が認められた.次に,網羅的遺伝子発現解析手法により,OTA投与により発現変動する遺伝子を腎皮質及び髄質外帯部間で比較し,OTA発がん過程早期に係る遺伝子群の同定を試みた.皮質部では変化は認められず髄質外帯部においてのみ発現変動が認められた遺伝子として,DNA二重鎖切断修復,細胞周期促進,DNA損傷応答を介したG2/M arrest誘発,癌抑制遺伝子p53に関わる遺伝子群が抽出された.OTAの発がん標的部位においてDNA二重鎖切断修復関連遺伝子の変動が認められたことから,OTAが同部位に誘発する欠失変異はDNA二重鎖切断後の修復過程に生じている可能性が示された.
- 2012-07-31
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