歯科矯正治療と歯科補綴治療により咬合の改善を図った片側性口唇口蓋裂2症例
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概要
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口唇口蓋裂患者の治療法は,顎発育,歯列形態,顎裂隣在歯,咬合状態など病態の多様性を考慮し,矯正治療,顎裂部二次的自家腸骨海綿骨移植術(Secondary bone graft:以下S.B.G.と略す),顎矯正手術,補綴治療の必要性と至適時期を総合的に考えて治療計画を立てる必要がある。今回我々は,顎矯正手術を施行するかどうかのボーダーラインと考えられる片側性口唇口蓋裂症例で,歯科矯正治療と歯科補綴治療により咬合の改善を図り,咬合状態が比較的安定していた二症例について報告する。〔症例1〕初診時年齢5歳0か月,左側口唇口蓋裂を伴う切端咬合を呈する男児。overjet 0mm,overbite 0mm,上顎歯列弓の狭窄を認めた。W-type拡大装置による上顎歯列弓の側方拡大を行い,13歳7か月時からマルチブラケット装置を装着した。16歳0か月に鼻口唇修正術を施行し17歳7か月時に保定装置を装着した。動的治療終了後,19歳9か月時にS.B.G.を施行し,20歳7か月時に顎裂部の欠損に対して補綴処置を行った。治療結果として,顔貌は改善され,咬合は比較的安定していた。〔症例2〕初診時年齢9歳4か月,右側口唇口蓋裂を伴う反対咬合を呈する男児。Overjet-5mm,overbite+1mmで,上顎骨劣成長と上顎歯列弓の狭窄を認めた。W-type拡大装置による上顎歯列弓の側方拡大および上顎前方牽引装置による上顎の成長誘導を期待した。13歳4か月時からマルチブラケット装置にて治療を行い21歳3か月時に保定装置を装着した。24歳4か月時にS.B.G.を施行し,25歳8か月時に顎裂部の欠損に対して補綴処置を行った。25歳9か月時に鼻口唇修正術を施行した。治療結果として,顔貌は改善され,咬合は比較的安定していた。
- 2011-10-25
著者
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川元 龍夫
東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科 顎顔面矯正学分野
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森山 啓司
東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科顎顔面矯正学分野
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河野 郁子
東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科 顎顔面矯正学分野
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川元 龍夫
東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科顎顔面頸部機能再建学系顎顔面機能修復学講座顎顔面矯正学分野
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