結核菌の病原性および増殖制御機構の分子遺伝学的解析と応用研究
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概要
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結核菌は,飛沫核感染によって,肺を侵入門戸としてヒトに感染する。感染者の約5%が速やかに結核を発症するが,多くの場合(感染者の約95%),無症候感染が成立する。ヒト型結核菌は,ヒトに特化した寄生病原体であり,感染成立後,免疫系は菌を生体から駆逐することができない。現在,無症候感染者は人類の1/3にのぼると推定されている。結核菌をはじめ,ヒトに寄生する病原性抗酸菌は遅発育性である。さらに潜伏感染菌の多くは,増殖を停止しているが死滅しない休眠状態に移行する。遅発育性や休眠現象は,疾患の慢性化や宿主―菌双方の長期生存につながる病原性抗酸菌に特徴的な形質である。一方,無症候結核菌感染者の5-10%で感染菌の再増殖,すなわち内因性再燃が生じる。成人肺結核の多くがこの機序で発症し,現在,年間約100万人以上の命が失われている。このように結核の無症候化(潜在化)と発症は,結核菌自身の増殖と密接にリンクする。以上の背景のもと,結核菌の病原性解析のベースとなる,抗酸菌の宿主ベクター系の構築とその応用を図るとともに,菌の増殖制御メカニズムを解析し,結核菌の生体内増殖を促進する宿主分子や,菌自身の遅発育性や休眠現象に関わる増殖抑止蛋白質を同定した。
- 2011-12-31
著者
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