日本人正常妊婦におけるQOLの縦断的調査
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概要
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目的 本研究は,妊婦におけるQOLの変化とこれに関連する因子を明らかにすることを目的とした。対象と方法 妊婦一般健康診査を受診した正常な妊娠経過を辿る日本人女性159名を対象に,妊娠初期の12~15週,中期の28~29週,末期の38~39週のQOLの変化と,妊婦の就業や家庭環境,サポート面などの社会的な背景や,出産経験や計画的妊娠の有無,妊娠中の生活への影響要因との関連についてSF-36の8つの下位尺度を用い,反復測定分散分析を行った。結果 「身体機能」は妊娠初期,中期,末期において漸減し,「日常役割機能(身体)」,「体の痛み」,「活力」,「社会生活機能」のQOL得点は,妊娠末期において有意に低下していた(p<0.05)。 妊娠各期のQOL得点の低下には妊婦の持つ背景との関連が認められており,就業者の妊娠初期の「活力」は低下し,妊娠中の家事手伝いや相談等のサポートを実母より受けていない者における妊娠末期の「身体機能」,「日常役割機能(身体)」,「社会生活機能」は低下していた。出産経験や妊娠の計画性のあった者には,妊娠初期または末期に「体の痛み」,「活力」,「社会生活機能」の低下が見られた。妊娠中の生活への影響要因との関連については,体調不良を経験した者,情緒不安を経験した者,容姿・体重などの身体の変化に関する心配を経験した者,生まれてくる子どもの健康に関して心配した者は,妊娠期のいずれかで「身体機能」,「日常役割機能(身体)」,「体の痛み」,「活力」,「日常役割機能(精神)」,「心の健康」の低下が見られた。結論 妊娠の経過に伴い,妊婦のQOLは主に身体健康側面で低下していたことが明らかとなった。また,QOLの低下には出産経験やサポート,妊娠中の生活への影響など,妊婦の持つ様々な背景の因子が関連していた。妊婦のQOLを高める方策として,妊婦のQOL低下とこれに関連した因子について配慮することが,妊娠各期を通じて重要になると示唆された。
- 2010-06-30