反応拡散場の非一様性を活用した多値演算
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概要
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空間的な広がりを持つ場の化学反応を記述する方式に, 反応拡散モデルがある. このモデルはこれまで主に時空間パターンの再現などの観点から研究されてきた. 近年, 生物の信号処理が生体内, つまり溶液系で行われていることなどから, 従来型の信号処理機構ではなく, 反応拡散の性質を活用した, 新しいタイプの信号処理モデルが模索されてきている. 反応拡散場上の興奮波の伝播を信号の伝播ととらえる立場にたち, 反応場の性質を非一様にすることで, 時間情報を含んだ信号処理が実装可能となることを, 著者らはこれまで示してきた.拡散場上に, 二つの入力信号の伝播する反応拡散場と, 出力信号の伝播する反応拡散場を配置することで, 二入力信号の入力タイミングの同期を検出することが可能であることが, 数値計算・化学反応実験でこれまで示されている. 本論文では, 出力場の先端部分に, 生物由来のバースティングを示す性質を付加することで, 二つの信号の入力時間差が, 出力場における応答波数で符号化され, 多値演算の形で実装可能であることを報告する.
- 2010-12-30