歯周炎患者における抗菌ペプチドLL-37の臨床的意義
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概要
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本研究では, 抗菌ペプチドであるLL-37の唾液中の濃度の測定と共に主要な歯周病原細菌の検出を行い, 本ペプチドの歯周炎患者における臨床的意義を検討した。サンプルとして無刺激唾液を72名の歯周炎患者および22名の健常者より採取した。唾液中のLL-37濃度の測定をELISA法により, 4種の歯周病原細菌(P. gingivalis, T. forsythia, T. denticola, A. actinomycetemcomitans)の検出をPCR法により行った。また, 歯周組織検査としてプロービングポケットデプス(PPD), 臨床的アタッチメントレベル(CAL), プロービング時の出血の有無を記録した。その結果, 歯周炎患者の唾液中のLL-37濃度は健常者と比べ有意に高い値を示した。歯周炎患者では歯周病原細菌が高い割合で検出され, T. denticolaやA. actinomycetemcomitansが検出された患者ではこれらの細菌が検出されていない患者と比べ, LL-37濃度は有意に高い値を示した。また, 歯周炎患者における5mm以上のPPD/CALを持つ歯の割合と唾液中のLL-37濃度の間には正の相関が認められた。さらに重回帰分析の結果, T. denticolaの存在と唾液中のLL-37濃度との関連が示唆された。本研究より, LL-37は歯周病原細菌の存在に呼応するように産生量が上昇するが, その作用は歯周病原細菌を除去し, 歯周組織破壊を食い止めるには十分でないと考えられた。日本歯周病学会会誌(日歯周誌)52(4) : 401-408, 2010.
- 2010-12-28