黄体機能の消長と性周期の回帰
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概要
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ラットのような不完全性周期動物では,排卵後に形成される黄体はプロジェステロン分泌能を持たないまま機能的に退行するため,約4日間という短い性周期を回帰する.一方,完全性周期動物では約2週間の黄体期が存在するため,性周期の長さはそれ以上に延長する.完全性周期動物においても,ウシ,ヒツジなどの反芻動物では霊長類などと異なり,黄体期に排卵に至らない1,2回の卵胞群の発育(以下,黄体期発育波)が起こることが知られている.シバヤギにおいて黄体期発育波を超音波画像診断装置を用いて検討したところ,基本的に2回の黄体期発育波を持つことが明らかとなった.次に,排卵後第3,4日にプロスタグランジン(PG)F2αを投与して黄体を退行させたたところ,第1黄体期発育波の主席卵胞の排卵が第6日に観察された.さらに,このようにして誘起した排卵後,同様にPGF2α 処置を繰り返すことにより,6頭の動物で4周期にわたってほぼ6日毎に排卵を誘起することができた.すなわち,シバヤギにおいても黄体からのプロジェステロン分泌を阻止することにより,ラットに見られるような不完全性周期様の性周期が回帰することが明らかとなった.ラットでは黄体にプロジェステロンを代謝する20α-水酸化ステロイド脱水素酵素(20α-HSD)の遺伝子が発現することにより不完全性周期が維持されている.ラットとシバヤギでは20α-HSD遺伝子プロモーターの活性化機構が異なると考えられ,適切なプロモーターの支配下で黄体に20α-HSD遺伝子を発現する形質転換シバヤギを作出すれば,不完全性周期を回帰する可能性が高いと考えられる.
- 1998-12-01
著者
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西原 真杉
東京大学大学院農学生命科学研究科・獣医生理学教室
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西原 真杉
東京大学大学院農学生命研究科 獣医生理学教室
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西原 真杉
東京大学大学院農学生命科学研究科獣医生理学教室
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高橋 迪雄
東京大学農学部家畜生理学教室
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高橋 迪雄
味の素(株)健康基盤研究所
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李 俊佑
東京大学大学院高等動物教育研究センター実験資源動物科学
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高橋 真人
帯広畜産大学家畜生理学教室
-
高橋 迪雄
東京大学大学院農学生命科学研究科獣医生理学教室
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李 俊佑
東京大学附属高等動物研究教育センター
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石田 真帆
東京大学大学院農学生命科学研究科 獣医生理学研究室
-
高橋 迪雄
東京大学
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李 俊佑
東京大学大学院農学生命科学研究科高等動物教育研究センター
-
高橋 迪雄
東京大学農学生命科学研究科獣医生理学研究室
-
Takahashi M
Iwate Prefecture Central Livestock Hygiene Serv. Center Iwate
-
高橋 迪雄
東京大学農学生命科学研究科
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澤崎 徹
実験資源動物科学
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李 俊佑
東京大学大学院 農学生命科学研究科
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