Ca感知受容体の機能選択的活性化 : まれな疾患からのヒント
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
古典的なGタンパク質共役受容体(GPCR)のtwo-stateモデルでは,GPCRは活性型と不活性型との間で平衡状態にあり,各GPCR作動薬はその平衡状態をシフトさせる方向性からアゴニスト,インバースアゴニスト,アンタゴニストと分類されてきた.最近,GPCRは活性型,不活性型いずれにおいても無数の高次構造を取り得ると考えるmulti-stateモデルを支持するデータが集積している.このモデルでは,各作動薬はそれぞれユニークなGPCRの高次構造を認識して結合しこれを安定化させると考えられる.GPCRの個々の高次構造において潜在的にそれぞれ異なる機能を発揮すると考えられる.この考えに基づけば,あるユニークなアゴニストあるいは通常のアゴニストとアロステリックに作用する調節因子の作用のもとに,本来複数のGタンパク質を活性化するGPCRを介して,あるシグナル系のみを特異的に活性化(機能選択的活性化)することも夢ではない.今回,我々が疾患で発見解析したCa感知受容体に作用する自己抗体は,こうした機能選択的活性化を可能にするアロステリックに作用する調節因子であった.このきわめてまれな疾患の解析結果は,同様な機能選択的な活性化が生理的にも作動していることを暗示しているのかもしれない.さらに,GPCRの機能選択的な調節をターゲットとする薬剤の開発は,今後のGPCR作動薬分野の創薬における新しく重要な方向性を示していると考えられる.
- 社団法人 日本薬理学会の論文
- 2009-11-01
著者
関連論文
- 診断力をみがく イメージトレーニング 全身倦怠感と体重減少を伴う低Na血症の1例/いびきを主訴とした1例/嗄声と下腿浮腫を伴う全身倦怠感を主訴とした1例
- 内分泌 カルシウム感知受容体--アロステリックな制御と疾患・薬剤 (第5土曜特集 最新 G蛋白質共役受容体研究--疾患解明とシグナル制御の新時代) -- (受容体機能の新たな展開)
- 先天性副腎皮質過形成に難治性バセドウ病を合併し、治療に苦慮した一例
- G蛋白質共役受容体の新しいパラダイム--機能選択的活性化 (第5土曜特集 最新 G蛋白質共役受容体研究--疾患解明とシグナル制御の新時代) -- (受容体の解析・制御のあらたな視点)
- Ca感知受容体の機能選択的活性化 : まれな疾患からのヒント
- 原因候補遺伝子 Gタンパク質遺伝子 (高血圧(第4版)--日本における最新の研究動向(上)) -- (遺伝子研究)
- 受容体・シグナル伝達の最新知見 Gタンパク質共役受容体 (高血圧(第4版)--日本における最新の研究動向(上)) -- (循環生理活性物質の最新知見)
- 甲状腺ホルモン (特集 腎不全とホルモン) -- (腎不全・透析患者における内分泌環境)
- AYUMI Glossary of Terms アルドステロン研究の理解に必要な基礎知識(臨床編) (第1土曜特集 アルドステロン研究の新展開)
- G蛋白異常による疾患群
- 受容体シグナルと制御-インバースアゴニスト (第1土曜特集 G蛋白質共役受容体研究の新展開--疾患メカニズムの解析と制御へのあゆみ) -- (総論:受容体の解析・制御の新しい視点)
- G蛋白質シグナルのアンバランスと高血圧 (〔2002年〕8月第5土曜特集 高血圧のすべて) -- (高血圧の基礎)
- G蛋白共役受容体のクロストーク:divergenceとconvergence--循環調節ホルモンを中心に (第1土曜特集 循環調節ホルモン研究の新展開)
- 副腎不全の診断における課題
- 超音波Bモードでの甲状腺良性結節の診断 (AYUMI 甲状腺画像診断の進歩)