単飼ケージにおける肉用雄種鶏の趾底損傷と行動に及ぼす止まり木設置の影響
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概要
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平飼いで飼育されていた白色コーニッシュ雄種鶏12羽を,市販の種鶏雄用ケージ(C区),これに止まり木を取り付けたケージ(P区),ケージの空間を1.7倍広げて止まり木を取り付けたケージ(PW区)の3処理区に4羽ずつ割り当て,22週齢から57週齢まで単飼した.処理区間および週齢間で趾底損傷の形成,止まり木利用率および行動を比較し,止まり木による趾底損傷の高進の抑制およびストレス緩和の効果について検討した.趾底損傷は全ての区で発生し,ケージ収容期間の長期化とともに悪化したが,PW区ではその程度が低かった.止まり木利用率は,PおよびPW区ともに導入直後から高かったが,止まり木に乗るとケージ天井に肉冠が接触するP区では3週後の利用率は低下し,PW区では高いまま推移した.導入当初,C区では強い葛藤に由来すると考えられる偽摂取行動が非常に多かったが,PおよびPW区では伏臥位休息行動や身繕い行動が多い傾向を示した.PおよびPW区の各個体ごとの止まり木利用率と,趾底損傷および行動との関係をみると,25週齢での止まり木利用率が高く,止まり木上での伏臥位休息行動が多い個体は,57週齢での損傷の高進が抑えられた.これらのことから,ケージ収容後の約3週間,趾底損傷が発生する前に,止まり木の利用と止まり本上の伏臥位休息行動を促進することで,その後の損傷の高進が抑制されることが示唆された.さらに,止まり木設置によって,強い葛藤行動は減少し,逆に慰安性の高い行動は助長され,ストレス緩和の効果も認められた.
- 社団法人 日本畜産学会の論文
- 1996-02-25