神経細胞樹状突起スパインのアクチン細胞骨格
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
樹状突起スパインは脳内の主要な興奮性シナプス後部であり,その形態および構成タンパク質の可塑的変化は学習記憶などの高次機能に重要である.スパイン内の構造体としては,シナプス後部肥厚(PSD)とアクチン細胞骨格があり,スパインの形態変化は主にアクチン細胞骨格により制御されている.スパイン内ではその頭部と頸部でアクチン線維の構造が異なることに加えて,頭部の中でもシナプス直下のPSD近傍と細胞質の中心領域でアクチン結合タンパク質の分布が異なる.したがって,スパインは3種類の性質の異なるアクチン細胞骨格によって構成されていると考えられる.アクチンを脱重合させると,多くのスパイン構成タンパク質の局在が不安定化し,スパイン形態もフィロポディア様に変化する.従って,アクチン細胞骨格がスパイン形態の形成,安定化に必須であることがわかる.発達過程におけるアクチン細胞骨格の変化に関しては,スパインの前駆体であるフィロポディア内で,アクチン結合タンパク質ドレブリン依存的にアクチン線維が集積することがわかっている.この集積はその後のPSD95の集積やスパインの形態形成の制御に促進的に働く.成熟スパイン内においてもアクチン線維やドレブリン,プロフィリンをはじめとするアクチン結合タンパク質の量が神経活動依存的に増減することが知られており,アクチン結合タンパク質の構成変化がスパインの形態やその可塑的変化を制御する基盤と考えられる.実際,アクチン結合タンパク質に変異を導入した遺伝子変換動物では,シナプス伝達効率の可塑的変化に異常をきたすことが報告されている.スパインの形態形成とアクチン細胞骨格の異常は認知機能の異常を伴うヒト脳の疾患でも数多く知られており,その制御機構の解明は急務である.
- 社団法人 日本薬理学会の論文
- 2007-11-01
著者
-
花村 健次
群馬大院・医・神経薬理学
-
白尾 智明
群馬大院・医・神経薬理学
-
白尾 智明
群馬大学 院・医・神経薬理学
-
白尾 智明
群馬大学 医学部 神経精神医学 講座
-
花村 健次
群馬大学 院・医・神経薬理学
-
白尾 智明
群馬大学大学院医学系研究科 医科学専攻高次細胞機能学
関連論文
- 5. 樹状突起スパインの形態変化におけるドレブリンの役割(第56回北関東医学会総会抄録 一般演題)
- B-30 ヒルシュスプルング病と類似疾患における未熟神経の関与 : 特に免疫組織学的検討
- 一過性脳虚血後の海馬神経細胞におけるドレブリンの変化
- スパイン形成とシナプス後部アクチンの特殊化--ドレブリンの関与 (特集・シナプス後部構造の形成・機構と制御)
- 蛋白レベルからみた神経シナプスの発達と異常
- 10. ドレブリンA過剰発現が誘導する樹状突起フィロポディア内へのF-アクチンとPSD-95の集積(一般演題)(第51回北関東医学会総会抄録)
- スパインアクチン細胞骨格は興奮性シナプス成熟を制御する (神経回路の機能発現のメカニズム) -- (受容体とシナプス形成)
- 17.成体ラット脳内新生ニューロンの放射線感受性の検討(一般演題,第55回北関東医学会総会抄録)
- 7.発達期神経細胞における放射線感受性に関する研究(一般演題(基礎的,臨床研究),第34回群馬放射線腫瘍研究会抄録)
- 受容体とシナプス形成 樹状突起スパインの形成と機能制御にかかわるアクチン細胞骨格蛋白質 (神経の分化,回路形成,機能発現) -- (神経系の機能分子)
- 17. 嗅球摘出マウス海馬におけるシナプス可塑性関連遺伝子の発現変化(一般演題,第54回北関東医学会総会抄録)
- 脳の発生と蛋白質の変化--drebrinについて (神経系形成の蛋白質性因子と遺伝子による制御)
- 培養小脳顆粒細胞移動の速度はNT-3によって抑制される : タイムラプスビデオ顕微鏡による解析
- 小脳顆粒細胞の凝集塊培養でニューロトロフィンの神経突起伸長, 細胞移動におよぼす影響
- 群馬大学医学部行動分析学教室
- 脳ファシンの解析:アクチン線維結合・束化能に及ぼすドレブリンの影響
- K252aによる培養小脳顆粒細胞移動抑制のメカニズム
- 培養小脳顆粒細胞移動抑制の免疫組織化学的解析
- 13.ドレブリン結合タンパク質Spikarにおける核外移行配列の解析(一般演題,第53回北関東医学会総会抄録)
- 興奮性シナプスのアクチン結合蛋白質--その動態と機能
- 11. ドレブリンA過剰発現マウスの海馬スライスCA1領域における長期増強(一般演題)(第51回北関東医学会総会抄録)
- 幼若脳の修復と脳室下領域(SVZ)細胞の役割 : ラットを用いた免疫組織学的分析
- PROFILE
- 海馬内興奮伝播のゲート機構 (特集 記憶研究最近の進歩)
- アクチン結合蛋白ドレブリンAによる細胞骨格および細胞接着の変化
- B1 未熟神経節細胞の免疫組織科学的検討 : 特にMeconium Diseaseについて(第1報)
- 神経細胞樹状突起スパインのアクチン細胞骨格
- 9. 成体脳の新生神経細胞におけるドレブリンアイソフォームの同定(一般演題)(第51回北関東医学会総会抄録)
- 統合領域としての生理学の存在意義
- 神経発生における神経細胞骨格関連タンパク質の役割
- 第23回国際神経化学会大会 (ISN-ESN 2011) の感想記