致死性不整脈におけるCa^<2+>制御タンパク異常の関与
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概要
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近年,不整脈の治療において,実際に不整脈が生じた場合の治療法(downstream approach)に加え,様々な病態に対する心臓の代償機構の破綻を防止することにより不整脈の発生を予防する治療法(upstream approach)の重要性が強調されるようになった.不整脈の確実な治療法が確立されていない理由の一つとして,従来からの抗不整脈薬は主として細胞膜上のイオンチャネルを中心にコントロールする治療薬であり,upstream approachとして不整脈基質に焦点をあてた治療の遅れがある.肥大心筋細胞,虚血心筋細胞,不全心筋細胞などでは,細胞に多様な機能的・器質的変化が生じており,これらは致死性不整脈の発生・維持の基質となる可能性があり,神経体液性因子などの一過性因子が加わって不整脈の発生に至ると考えられている.不整脈の発生機序としては,1)刺激生成異常,2)興奮伝導異常,さらには3)両者が混在したものが考えられている.刺激生成異常には自動能異常と撃発活動(triggered activity)がある.撃発活動には早期後脱分極(EAD)と遅延後脱分極(DAD)があり,これらの発生には細胞内Ca2+過負荷の関与が考えられている.特にDADの成因は細胞内Ca2+濃度の変化に応じた膜コンダクタンスの周期的変化によるとされている.ゆえに,細胞内Ca2+過負荷は重要な不整脈基質と考えられている.また,興奮伝播異常を引き起こす因子として,ギャップ結合リモデリングがある.心筋細胞間の興奮伝播はギャップ結合を介して行われ,隣接する細胞間を種々のイオンや情報伝達物質が交通し,心筋細胞の正常な興奮伝導はギャップ結合に依存していると考えられている.虚血心筋細胞,肥大心筋細胞,不全心筋細胞,さらにはリモデリングをきたした心臓ではギャップ結合に質的・量的変化が生じ,回帰性不整脈の一因になると考えられている.本稿では,致死性不整脈の発生・維持機構における細胞内Ca2+制御タンパク質異常とギャップ結合リモデリングの関与について,我々のデータを含めた最近の知見に基づき概説する.
- 社団法人 日本薬理学会の論文
- 2005-10-01
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