ニホンザルの生息頭数調整における生殖生物学の応用(<特集>野生動物保全のための種保存計画における現状と課題)
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概要
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近年, 野猿公園のニホンザルにおいて, 餌付けによる急激なサル個体数増加や分布の拡大により, 農作物等の被害が急増し深刻な状況を招いている。また, 自然環境荒廃, 森林植生への影響が懸念されている。これらの対策として環境収容力に応じた適正頭数にまでサル生息頭数を減少させるための避妊法の応用を試みた。野猿公園での実施に先立ち, 室内個別ケージ飼育のサルを用いて, その避妊効果, 安全性, また効果持続期間について検討を行った。その結果, 合成黄体ホルモン含有インプラント法はサルの捕獲, 麻酔, 小手術は必要なものの, 一度の施術で3年程度の排卵抑制効果があり, インプラント剤摘出後は月経, 排卵の回帰が見られ, 正常な妊娠, 出産が確認され, 妊孕性に問題がなく, その効果は可逆的であることが確認された。本法を野猿公園のニホンザルに適用したところ, 出産抑制効果が認められ, 個別ケージ飼育のサルと同様の期間, 効果が持続することが分かった。本法はサル生息環境や群れ構成などの詳細な分析を行い, 長期的な計画のもとに使用することにより, 生息頭数調整法として応用可能と考えられた。
著者
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