歯科矯正用 Ni-Ti ワイヤーの曲げ回復特性
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概要
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下顎切歯の矯正を想定して, 歯科矯正用Ni-Tiワイヤーの曲げによる変形ならびに回復特性を調べた.市販品Sentalloy(S), Nitanium(N), Bioflex(B)から, 共通する5種類の断面形態, サイズのワイヤーを選び, 三点曲げ試験およびActiva^[○!R]ブラケットを支点とした曲げ試験を行った.加工硬化型の特徴を示したワイヤーN_2およびB_4を除き, 用いたすべてのワイヤーは口腔内温度で超弾性ヒステレシスにより, 比較的低いレベルの安定した回復力を示すことがわかった.いずれのワイヤーにおいても, 与えたたわみ量が大きいほど, ヒステレシスは大きくなった.弾性領域における弾性率は, ワイヤーの断面積が小さく, 温度が高いほど大きくなったが, 超弾性領域での弾性率は著しく小さく, またワイヤーの断面形態および温度の影響も小さかった.一定たわみを与えるのに必要な曲げ荷重およびその後の回復力は, ワイヤーNが最も大きく, ワイヤーSが最も小さかった.各ワイヤーにおいては, サイズが大きく, スパンが短いほど, また温度が高いほど大きくなった.ブラケット支持によって曲げ荷重および回復力は著しく増大したが, 口腔内温度におけるブラケット支持下でのワイヤーの平均回復力は, 室温で三点曲げによって同等のたわみを与えた場合の曲げ荷重と強い相関を示し, いずれのワイヤーにおいてもその比は約1.5であった.このことから, 口腔内で発現する平均矯正力は室温での単純な三点曲げ試験の曲げ荷重からほぼ予測が可能であることがわかった.小さな矯正力を得るには小さなサイズのワイヤーを選択することが必要であるが, 選択したワイヤーの矯正力をさらに小さくする必要がある場合には, アーチワイヤーにいったん不正歯上のブラケットスロットを越えるほど大きなたわみを与えた後ブラケットにセットするか, あるいはブラケット間距離を拡大する方法が有効な手段であることが示唆された.
- 1997-02-25