<特集>腰痛とつきあう(<特集>第9回都民公開講座「関節痛とつきあう」)
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概要
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腰痛は,成人が感じる痛みのうち頭痛と並んで頻度が高く,80%以上にのぼる.腰痛の原因となりうる器官には,骨・関節・筋・筋膜・腱・神経・椎間板などがあり,またこれらの器官に障害を起こす原因として,外傷・疲労・変性(老化)・炎症・腫瘍などがある.すなわち,腰痛はこれらの要因が複雑に錯綜して生じる,非常に複雑な病態である.腰痛に対する医学の対応は3つに大別され,第1は癌や椎体炎など,見逃してはならない重大な疾患を検索することである.第2は椎間板ヘルニアや腰椎分離症など,脊椎疾患を見つけ,適切な処置を行うことである.第3は上記以外の原因として,画像診断法では描出できない腰痛に対する地道な研究である.腰痛の大多数は,この第3の範疇に属する.《腰痛とつきあう》という概念・対処法は,多くは上記の第3の場合を想定している.職業性要因,スポーツ等による使いすぎ,脊椎の加齢変化などが原因であることが多い.急性に発症し数日でおさまってしまう腰痛の場合,再発しなければ特別な注意は要らない.問題は慢性化した腰痛であり,これには持続性のものと,再発を繰り返すものとがある.持続性の慢性腰痛の場合,原因検索を慎重に行うべきであり,腰椎不安定性の存在や背筋のいちじるしい筋力低下などの病的状態が考え得る.これらの場合,脊椎の固定手術や筋力増強などが有効である.再発を繰り返す慢性腰痛では,環境因子の解明が重要である.腰部を暖かく保つこと,適当な運動により筋力を維持し,また脊柱の可動域を保持することが,再発予防として重要と考えられている.腰痛を感じたら,まずは比較的安静を数日とり,これで痛みが寛解しないようなら医療機関を受診し,重大な疾患や腰椎の治療すべき疾患を検索することが肝要である.これらの疾患の検索無しに,強い外力を加える民間治療を受けることは危険である.
- 2002-09-30
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