炎症誘発因子としての血小板活性化因子
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概要
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血小板活性化因子 (Platelet-activating Factor; PAF) は細胞膜リン脂質を前駆体として生成する内因性のリン脂質である。PAFは抗原感作したウサギ好塩基球より放出され血小板を凝集させる液性因子として, 1972年にBenvenisteによって発見された。1979年にPAFの構造が1-<I>O</I>-アルキル-2-アセチル-<I>sn</I>-グリセロ-3-ホスホコリンと同定されて以来, PAFは血小板活性化作用以外にも血管透化性亢進, 白血球活性化, 平滑筋収縮などの炎症反応に関与する生理活性を持つことが明らかとされてきた。一方, 天然物や合成PAFアナログから抗PAF薬の探索が行われ, 数多くのPAFの受容体に作用するアンタゴニストが報告された。FAFアンタゴニストの存在はPAFが標的器官上のレセプターを介して作用することを示しており, 1991年に至って, ShimizuらによりPAF受容体の遺伝子が初めて単離された。一方, PAFの分解・不活化酵素であるPAF-アセチルハイドロラーゼの遺伝的欠損がMiwa (3) らによって1988年に報告された事を契機として, この酵素の気管支喘息を代表とするアレルギー性疾患への関与について急速に関心が高まり, 細胞内型酵素の遺伝子クローニングが1994年に (4), また, 血漿型酵素については1995年に報告がなされた (5) 。PAF受容体およびPAFアセチルハイドロラーゼの遺伝子が単離された事により, 炎症反応におけるPAFの作用メカニズムおよび病態における役割に関する研究において飛躍的な進展が見られ, 本稿では, 主としてこれらについて記述した。
- 社団法人 日本油化学会の論文
- 2000-09-20
著者
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