Folding Strain Stereocontrol-閉環反応におけるジアステレオ選択性
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概要
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以上天然物合成の新規なジアステレオ選択的骨格構築法を模索する過程で提起した, 立体制御の新しい方法論の確立を目的とした研究について述べた。folding strain stereocontrolの考え方では, 閉環反応のジアステレオ選択性を, 閉環鎖のジアステレオ的フォルディングのエネルギー差を基礎として議論する。閉環反応におけるジアステレオ面選択において, folding strainと言う分子間の反応にはない新しい要因が重要であるとのと立場である。そしてこの考えに立てば, 反応点から離れた位置に立体中心をもつ系でも, 十分有効な不斉誘導が達せられる可能性がある。これまでも閉環反応におけるこの種の遠隔立体制御の例を文献にかなり見いだすことができるが, 方法論的なまとまった議論はない。folding strain stereocontrolの考え方によって, ジアステレオ的遷移状態のエネルギー差に関与するひずみの要因を, より実質的に考えることができると思う。そしてこのことによってジアステレオ的環構築法の反応設計が可能であり, ジアステレオ選択的閉環反応はこれまで考えられていた以上に立体選択的戦術として有用になると考える。これらのことは, この論文で紹介した筆者らの限られた例からもご理解いただけたと思う。<BR>これからの問題として, さらに広い範囲の反応あるいは立体源中心を含む閉環反応系への展開, 定量的な反応設計の手段としての分子軌道・分子力場計算からのアプローチなどが残されていると考えるが, この論文で提起したfolding strain stereocontrolの概念に基づく立体制御は, 発展性のある興味ある問題であると思われる。
- 社団法人 有機合成化学協会の論文
- 1996-07-01
著者
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